和歌山 · 紀伊半島
熊野本宮大社
熊野信仰の中心であり、熊野古道が目指した場所。1889年の洪水で社殿は高台へ移り、かつての社地には今、日本一の大鳥居が何もない河原にひとり立っています。
川によって移された神社
熊野本宮大社は、その歴史の大半を熊野川・音無川・岩田川が合流する中州「大斎原」で過ごしてきました。境内は現在よりはるかに広く、当時の記録には五棟十二社の社殿に加え、拝殿・神楽殿・能舞台などがあったと記されています。徒歩でたどり着いた参詣者は音無川を歩いて渡って境内に入るのが習わしで、それが神前へ向かう最後の禊でした。
1889年(明治22年)8月、台風による「十津川大水害」が社殿の大半を押し流しました。残ったのは上四社——三棟に四柱の神を祀る社殿——だけで、これらが現在の高台へ移され、1891年に遷座が完了しました。社殿を失った中四社・下四社の八柱の神々は、今も大斎原の旧社地に建つ二基の石祠に祀られています。
そのため、現在の本宮大社はその重要性に比べて小さく感じられるかもしれません。今見られるのは、はるかに大きかった境内の生き残った中心部分です。熊野本宮大社を訪ねるということは、実際には二つの場所——158段の石段を上った現在の社殿と、徒歩10分の何もない大斎原——を訪ねることになります。
訪問の前に
境内は無料で、参拝はおおむね8:00〜17:00。宝物殿は土・日・祝日のみ開館で9:00〜16:00(12:00〜13:30は昼休み)、拝観料は大人300円・子ども100円です。
境内では三本足の烏「八咫烏」を探してみてください。幟やお守り、拝殿近くの石碑などにあしらわれています。伝説では八咫烏が神武天皇を熊野から大和へ導いたとされ、神社は三本の足を「天・地・人」を表すと説明しています。日本サッカー協会が1931年に三本足の烏をシンボルに採用したのも「道を開く導き手」という同じ意味からです。
例大祭は4月13〜15日。13日には神職や稚児が湯の峰温泉で身を清め、古道の大日越を歩いて山を越え本宮へ向かう「湯登神事」が行われます。15日には神輿の渡御が町を進んで大斎原へ至り、最後に柴燈護摩が焚かれます。
熊野古道中辺路を歩くなら、ここが終着点です。最後の区間、発心門王子から本宮大社までは約7km・2時間ほど。全行程を歩かない人でも半日で歩ける距離です。
近くに泊まるなら湯の峰温泉がおすすめで、バスで15〜20分、古道を歩けば約3.5kmです。開湯約1,800年とされる日本最古級の温泉で、参詣者は本宮へ向かう前にここで湯垢離をとりました。川辺の小さな湯小屋「つぼ湯」は、世界遺産に登録された唯一の温泉です。
拝観:時間と料金
境内は無料です。宝物殿は開館日が限られているので、目当てにする場合は事前に確認してください。
| 施設 | 時間 | 料金 |
|---|---|---|
| 熊野本宮大社(境内) | おおむね8:00〜17:00、通年 | 無料 |
| 宝物殿 | 土・日・祝のみ 9:00〜16:00(12:00〜13:30休) | 大人300円/子ども100円 |
| 大斎原・大鳥居 | 常時 | 無料 |
熊野本宮大社へのアクセス
本宮に鉄道駅はなく、バスで向かいます。JR紀伊田辺駅(大阪から特急くろしおで約2時間)からは直通バスで約2時間、2時間に1本程度。JR新宮駅からはバスで約1時間。「本宮大社前」で下車します。
バスの本数が少ないため、大阪からの日帰りより、本宮や近くの湯の峰・川湯・渡瀬温泉に1泊する人が多いです。訪問前に田辺市熊野ツーリズムビューローのサイトで最新の時刻表を確認してください。